2013年12月12日木曜日

レジン修復 4


 前記のように今やレジン修復は、歯科治療の中で大きな位置を占めるようになりました。私もレジン修復を行わない日はありません。とは言え、この修復法にもいくつか欠点があります。今回は欠点についてまとめてみようと思います。
まず、一部の治療では未だ健康保険がきかないこと。例えば以下のような治療です。これは硬質レジン前装冠という、前歯によく使う金属冠です。見える部分は審美性のためレジンで白くしていますが、その白い部分が剥げて、金属が露出したとします。















修理にあたってはまず金属色をオペークシェードのレジンで遮断し、
















次に周囲に合わせたシェードのレジンを築盛します。
















 一般に前歯の硬質レジン前装冠は健康保険でやります。保険の前装冠の修理は保険が効きます。
 しかし、奥歯に入れられた前装冠の大部分は保険がききません。また、セラモメタルクラウンという、セラミックで前装した冠も保険適用外です。これら保険外で作った冠の修理は保険がききません。

 以前ご紹介した、歯と歯の隙間をなくすような修復も、「ムシ歯の治療ではない」という理由で保険がききません。そこにムシ歯があれば保険でやれるのですが・・・。
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 また、ほとんどのレジン修復は直接口の中で行います。そのため12本の治療なら一回で済むという利点もあるのですが、どうしても一回の治療が長くなります。ムシ歯の面積が大きければ1本の治療に1時間あまりかかったりします。
 歯を削って、型を採って石膏模型を起こし、模型上でレジンのインレーを作るという方法もあるのですが、この方法だと・歯を削る量が無駄に大きくなってしまう、・接着力が最大限に生かされない、・シェードを合わせるのがむつかしい、などの理由で、私は行っていません。



 次回までレジン修復の欠点について書いてみようと思います。

2013年12月5日木曜日

レジン修復 3


 ブログ更新をさぼっているうちに12月になってしまいました。何かと忙しい月ですが、今年はまだインフルエンザがはやっていないのがラッキーです。職業柄といいますか、インフルエンザはよく罹ります。

さて、レジン修復の続きです。ムシ歯を削って詰めるときレジンのシェードを合わせれば、修復した跡がよく歯質の色調と調和すること、また鋳造修復と違い必要以上に大きく削らなくていいので、歯質の保存という観点から有利なことが、前に掲載した写真などからご理解いただけたと思います。
さらに、レジン修復の特徴は、ボンディング材の強い接着力にあると考えます。例えば私は、接着材としてクリアフィルボンドSE1というのを使っています。これが大変使いやすい。
 まず、その強い接着力と耐久性が特徴と考えています。20年ほど前までのボンディング材は必ずしも接着力が十分ではありませんでした。そうすると、レジンを詰めた後で歯から一部が剥離し、その部分は様々な理由で痛みをおこします。このようなことが約15年前からなくなりました。接着力が大幅に強くなったからです。さらに、ボンディング材を歯に作用させる時間が約10秒と、大幅に短くなりました。
レジンと歯の接着は従来、テクニックセンシティブであるとよく言われました。歯にさまざまな薬剤を作用させる間に接着面が唾液に汚染されると、接着力は大幅に悪くなります。この作用させる時間が従来は30秒、もっと昔は1分以上もあったので、その間、口の中にあふれる唾液から接着面を守るのが大変難しかったのです。ところが最近は10秒ほど気を付けていればいいので(最新のボンディング剤はもっと短くなりました)、難しさは大きく改善されたと感じています。
 さらに、このボンディング剤は他の薬剤を併用することで、歯だけではなく金属、樹脂、セラミックなどにもよく作用します。従って過去の治療の際に使用した様々な材料の修理にも使えます。例えばレジン修復してある部分が再びムシ歯になっても、レジンを全て削り取ることなく、ムシ歯の部分だけを小さく削って、レジンを詰め足せばいいのです。以前には考えられなかったことです。


画期的な修復法であることは間違いないのですが、まだまだいくつかの欠点もあります。次回は欠点について書こうと思います。


2013年11月20日水曜日

歯科用アマルガムと水俣条約

レジン修復のことを考えていたら、歯科医師会から水俣条約に関する資料が送られてきました。数日前にニュースでやっていましたので、ご覧になった方も多いと思います。水俣条約の主な目的は、有機水銀中毒を根絶するために水銀の製造から廃棄に至るまで、厳しく規制しようというもののようです。
歯科においては、かつて虫歯の充填に銀錫アマルガム(略してアマルガムと言います)が盛んに使われていました。これは銀と錫を主成分とする金属粉を水銀で練ったものです。20分程で硬化し(たと思います)、硬化後は口の中でもきわめて安定していますので、かつては盛んに使われました。特にアメリカでは、関係学会のボスがアマルガム修復の専門家だったためか、1990年代まではレジン修復よりもはるかに多く使われていたようです。
日本ではと言えば、例えば私は1985年に歯科医師になりましたが、恐らく1回位しかアマルガムを使用したことがありません。学生実習では全く使用しませんでした。現代のレジン修復システムが主に日本で開発されたので、早くから普及したようです。今ではご年配の方の口の中にたまに見かける程度です。
仮に口の中にアマルガムがあっても、歯に詰められ硬化したアマルガムはものすごく安定なので、水銀が溶出することはまずありません。アマルガムが原因で、メチル水銀をはじめとする有機水銀が生成されることはまずありません。
硬化アマルガムを削って除去する場合には、削り屑が下水に入り、有機水銀を生成する可能性も少しあるので、切削片はふつうフィルターで除去します。それもごく微量で、かつそのような機会も少なくなってしまいましたから、今では歯科において水銀汚染が大きな問題になることはありません。
ただ、アマルガムが原因で、口の中に扁平苔癬というアレルギー疾患がおきた症例を経験しています。私の患者さんの場合は、水銀ではなくてわずかに含まれる亜鉛が原因でした。亜鉛は歯科で使用する多くの金属に含まれます。この患者さんの場合は、アマルガムをレジンで詰め換え、金属冠を2本ほどチタン製に換えたところ、次第に症状が消失しました。


歯科用アマルガムに関するQAが、日本歯科保存学会から発表されていますので、関心のある方はご覧になってみて下さい。私から見たら、まぁ妥当な内容だと思います。

2013年11月12日火曜日

レジン修復 2


すっかり秋めいてきました。ここ数日は朝夕めっきり冷え込み、そろそろ鍋の季節だなと、秘かに舌なめずりしています。
レジン修復の話を続けます。
前回お話ししたようにレジン修復の特徴は、小さく削ってしかも歯と同じ色調の材料で修復できることでした。たとえば左側の写真のような小さな虫歯は、そこだけを削って右側の写真のように治療することができます。治療のあとがわかりやすいように、歯とは異なる色調のレジンを詰めています。おわかりでしょうか?


 


さらに最近では、いわゆる「審美修復」にもレジンを用います。たとえば下のように、前歯の間に小さなすき間がある場合。従来ならば矯正を行うか、セラモメタルクラウンとか、レジン前装クラウンとかいった冠をかぶせて治すのが普通でした。



 でも歯科矯正は高額で、強制装置を長期間装着しなければなりません。冠をかぶせるためには歯を大幅に削らなくてはならず、虫歯でない場合はあまりいい方法とはいえません。
そこで、あくまですき間が小さな場合ですが、レジンで修復するのが最近の主流になってきました。左の写真は1本目の修復を終えたところ、右は2本目の修復も終えたところです。



 



虫歯の治療ではないので健康保険は使えませんが、冠をかぶせたり矯正するよりはずっと安いと思います。一番いいのは歯をほとんど削らなくてすむことです。いかがでしょうか。

2013年11月4日月曜日

レジン修復 1


ブログをはじめて2か月ほどになります。週1回の更新を目指していますが、なかなか思うようにいきません。ま、読者はあまりいないと思われるので(笑)かまわないのかもしれませんが、もう少し頑張ります。さて、レジン修復です。正確には「光重合コンポジットレジン修復」という長ったらしい名称です。合成樹脂のことをレジンと言います。歯の修復に用いるレジンはBis_GMA系の複合樹脂が多いようです。私が使用しているのはこれです。20年ほど前までは、歯を削って詰め物をする場合に、金属を使用することもありましたが、現在は審美性、歯質の保存という観点からほとんどの場合、レジン修復を行います。1、2枚目の写真は、インレー修復された抜去歯です。

 


3,4枚目の写真はインレーを外したところ。



5,6枚目はレジンで修復したところです


ピンボケで見苦しいですね。
 この歯は上顎の小臼歯ですが、臼歯のような大きな力のかかる部分でも、虫歯の穴が小さければ、このようにレジンを充填するだけで済みます。また、インレーで修復するためには、1日目)金属部分の出し入れが可能なように、虫歯部分を含めて穴を少し大きく削り、型    や咬み合せをとる。2日目)金属を歯科用セメントでくっつける。と、2日がかりでしたが、レジン修復の場合多くは1回ですみます。このことも利点の一つです。もっとも治療時間はやや長くなりますが。また写真でおわかりのように、審美性、つまり見た目という意味では金属修復にはるかに勝ります。色調の選択も可能で、前歯であっても虫歯の治療の跡はまずわかりません。
さらに、多くの場合は健康保険が効きます!

次回以降も抜去歯をモデルに、レジン修復の話を続けます。

2013年10月20日日曜日

読書録 1 北 杜夫 幽霊


私の読書歴の中で、いまだに印象深く残っている本について、感想程度の文を載せてみたいと思います。たいして読まれてもいないこのブログの、さらに埋め草程度にはなるでしょうか。
このパートだけはどうしても敬体がしっくりこないので、常体で綴ることにします。

北 杜夫 幽霊―或る幼年と青春の物語

 きっかけは中学1年の夏、父の書架から引っ張り出して読んだ「どくとるマンボウ昆虫記」だったと記憶している。ユーモアに満ちたエッセイなのに、抒情的なにおいをあわせ持つ文章に惹かれて、この作者の他の作品も読むようになった。

「人はなぜ追憶を語るのだろうか。どの民族にも神話があるように、どの個人にも心の神話があるものだ。その神話は次第にうすれ、やがて時間の深みのなかに姿を失うように見える。 だが、あのおぼろげな昔に人の心にしのびこみ、そっと爪跡を残していった事柄を、人は知らず知らず、くる年もくる年も反芻をしつづけているものらしい。」

で始まる、非常に美しい小説。安原顕か福田和也だったと思うが、日本の私小説の精華である、というような書評をしていた。大枠では精神医学の知識に裏打ちされた、追憶、無意識、深層心理といったものをテーマとし、詳細では作者が少年期に親しんだ信州の自然、また昆虫に対する膨大な知識を礎とし、トーマス マンに範をとったと思われる息の長い、清冽な描写が物語を支える。
母への追慕、戦争、自然への親和、殊に蝶への偏愛を描き、少年時代特有の死への親和を語る、叙情性ゆたかな文章は、しかし決して甘美なではないと感じられ、それでいて透明な、夢のような文章だ。
何十年もの間、おそらくは年に数回、それこそ「反芻」するように、ランダムにページを開いてナイトキャップとしている。どのページを読んでも、いつも私はその文章に引き込まれ、陶然となる。あえて物語を追う必要はない。
 本書の影響からか、当時の私の作文はダラダラと長く、時に意味不明の文章となり、よく教師から注意された。この傾向は高校2年生のころ、川端康成の「文章読本」に出会うまで続いた。
私の純文学に対する興味は、この小説から始まった。「幽霊」をきっかけに私はトーマス マンや他の19世紀末ドイツ文学、日本では、第三の新人やそれ以降の作家たちの作品に目を開いていった。もちろん北 杜夫の他の作品は網羅的に読書した。

2013年9月29日日曜日

インプラントのトラブル⑤

 NHKの番組の視聴率が9.5%だったことは前にも述べました。担当ディレクターの感覚としては低視聴率だったのかもしれませんが、考えてみると、いまどきそう低い値でもなさそうです。一方雑誌でも、「もうダマされない!歯医者の裏側」などという特集が組まれたりして、まぁ昔からですが歯医者の金もうけ主義への風当たりは決して弱くありません。
 ただ、患者さんのインプラント治療に対する満足度は、高額にもかかわらず非常に高く、どのデータを見ても95%を下回ることはありません。インプラントがなくなることはないと思います。
 インプラントのトラブルから私自身への戒めとして学んだことは、以下のようなことでしょうか。
・インプラント治療に際しては、術式、費用を含め、事前にしっかりと説明をする。
・患者さんの体調も含め、正確な診査と診断をおこなう。
・自らの技術の限界を明確に認識する。限界を超える症例については、適切な紹介先を確保する。
・技術と知識の研鑽を怠らない。
 この2年弱、私がインプラントを巡るトラブルについて考えたあげく、出た結論があまりに平凡で私自身、やや拍子抜けです。インプラントに関しては初級者クラスですから、当然でしょうか。
 では私のような初級者クラスがなぜインプラントに取り組んでいるのかをお話ししておきます。
 インプラントの大きな利点は、確実な咬合支持と審美性にあると考えています。このうち審美性は上級者クラスがあつかう問題ですので、割愛します。
 たとえば下顎の奥歯をすべて失った場合、ほおっておくと前歯に異常な力がかかり、やがて前歯も失うことになります。一般的には義歯を作って対処しますが、義歯の乗る顎の土手の部分が年々低くなる、人工歯が擦り減っていく、などの問題は避けられません。対処する方法はあるのですが、半年から23年ごとの修理や再製作が避けられません。何らかの事情で患者さんがメインテナンスに来院できなくなった場合、残りの歯の状態が壊滅的に悪化していたなんてことはよくあります。
 その点、インプラントであれば、メインテナンスが必要なことは同じですが、修理や再製作の頻度は低く、メインテナンスではPMTCと呼ばれる歯の掃除や歯磨きの練習がメインで、手間もかかりません。


 このことは、歯周炎の患者さんにとっては大きな意味を持ちますので、後々述べてみたいと思います。

2013年9月24日火曜日

インプラントのトラブル④


 インプラントの専門学会として、例えば歯の欠損をいかにしておぎなうかという観点(歯科補綴学といいます)から研究している歯科医師が中心の日本口腔インプラント学会、口腔外科が専門の歯科医師中心の日本顎顔面インプラント学会があります。この2学会が中心となって最近のトラブルや、報道などに対応しているようです。
 診療ガイドラインも2学会が中心となって計画しているようです。ガイドラインはすでに歯科関係でも14ほど存在するようですが、インプラント治療のガイドラインは未だ作成されていません。
 なぜでしょうか。推測にすぎませんが、
①治療が一般に行われるようになったのが1980年代半ばと比較的歴史が浅い。上記2学会の成立もそれ以降である。
②ほとんどの場合が保険診療の適用外である。
などが原因と思われます。


私はガイドラインの作成に、もちろんかかわったことなどないのですが、加入する学会がガイドラインを作成する際、その苦労をある委員から聞いたことがあります。一般には、ガイドライン全体のデザインから始まり、いわゆるEBMにもとづく論文の収集と評価、また必要なデータの収集等を行い、完成した後に一定の基準で評価を行います。予備的な調査から始まって、数年がかりだということでした。もちろん論文は世界中から集めるのですが、各学会で相当の論文の蓄積がないとデザインを決める過程から困難があるそうです。
さらに、多くの診療ガイドラインは保険診療に採用されたか、保険診療で使用する機器、薬剤、方法などが変更されたなどの際行われます。インプラントでは顎腫瘍切除に伴う場合など、かなり限られた場合でないと保険が適用されません。それやこれやで作成が遅れたと思われます。
現在のところ、各学会が専門医制度を持っています。さらに、患者さん向けの相談窓口を設けたり、インプラント手帳というものを作成して患者さんに自身の情報を把握してもらう努力などがなされています。患者さん側からも評価をいただける事業だと思います。
ただ、一介の開業医として基礎的なインプラントを細々とやっている、私のような歯科医師の立場としては、やはり一刻も早くガイドラインを作ってほしいものです。自らの仕事を検証する基準になりますし、患者さんに説明する際の基準ともなるだろうからです。

2013年9月18日水曜日

インプラントのトラブル③


前回はくどい投稿になってしまいました。要するにインプラント治療の際重要なのは、困難症例を見極める、術後の口腔ケアをしっかりやる、この2点です。あと、高齢化に伴う口腔環境の変化については、今後の大問題と思われます。
さて、Quintessence Dental Implantologyという雑誌があります。日本の業界誌です。今年の1月号に興味をそそる記事が掲載されました。NHKクローズアップ現代「歯科インプラント トラブル急増の理由」を企画担当した米原達生氏へのインタビューです。米原氏は取材を重ねるうちに国民生活センターの報告とほぼ同じ問題点を認識されたようです。したがって氏の提言も、国民生活センターの「要望」等と一致します。
それより米原氏の直の言葉が面白い。抜粋して私の感想を付け加えてみます。

「むしろ経験豊富な歯科医師のもとで無理な治療、無謀な治療を受けトラブルになっている。しかも、歯科医師側からインプラントを勧められたケースがほとんど」
 経験豊富、という言葉が単に長年歯科医師をやっている、くらいの意味なら、まあわかりますが・・・。ちょっと私の予想に反する事実です。

「(NHKに寄せられた反響は)どちらかというと無風に近いものでした。(略)直接の批判というのは想像以上に少なかったです。」
 無茶なインプラントが歯科界では一部問題視されていましたから、賛否両論あったのは想像できますが、それにしても無風とは・・・。

「ちなみにあの回の視聴率は9.5%だったのですが、これは『クローズアップ現代』の中では比較的低い数字です。(略)低視聴率は覚悟していました。」
 あの放送の影響を私たちは診療室で強く受けています。でも一般のかたの関心は低かったと。テレビの強い影響力に驚嘆するばかりです。 

「(応援メッセージで)もっとも反応があったのは歯科衛生士です。(略)『患者さんへの説明会を開催しているが、参加者にインプラントの契約をさせるための流れがマニュアルとして出来上がっている。(略)』。」
 そうなんだ(笑)。ちょっとそのマニュアルを見てみたい気もします。

「インプラント治療を経験したことがある人たち、受けたことがある人たちの反応は、より具体的で(略)、現状ではどの歯科医院に行けばいいかわからないと言われました。」
「患者目線の安心は、医療の安全よりもつねに高い位置にあります。現在のインプラント治療を見ていると、患者さんの立場からするとわからない点が多く、安心を得られる状況にはありません。」


 ここから専門医制度の確立とガイドラインの整備の必要性が提言されていくわけです。これを受けて専門科学会も動き出しているようですが、まだまだ問題点もはらんでいるようです。
 最後に、ちょっと怖い歯医者さんの画像を見つけましたので、貼ってみます。

2013年9月16日月曜日

インプラントのトラブル②


  インプラントの件は、3回位の投稿で片付けるつもりでしたが、長くなりそうです。
6回くらいかかるでしょうか。と言うことで、緊急投稿です。


 口腔外科専門医の知人にいくつかのことを教えてもらったことは前回お話ししました。それに解説を加えていきます。彼らが示唆したのは、以下の問題点です。
①骨の幅が狭い、または十分な高さがない場合。
 通常の方法ではインプラントを打ち込めない場合があります。このようなとき、骨再生誘導法(GBR)とか、スプリットクレスト、サイナスリフトなど、いわゆる補助手術が必要です。詳しくはリンク先を参照してください。外科的な侵襲が大きいこと、手術の回数が増えること、いわゆる歯科的な小手術と術式が大きく異なること、などから、私の感覚では専門医の守備範囲と考えています。私の場合は口腔外科専門医に手術を願いします。
②無歯顎(歯が一本もない状態)にインプラント
 無歯顎の場合は、長い間の歯周炎のあげく無歯顎になった場合や、長い間義歯を使用していた場合など、①の場合と同様に広範囲で骨の量が足りなくなったりします。このような場合はもちろん補助手術が必要です。必要ない場合もありますが。その後複数のインプラントを打ち込み、歯の部分は上下それぞれ連結して、一体のものを入れます。
この連結、というのが問題で、このように大変うまくいった場合はともかく、例えば5本の連結されたインプラントのうち1本がダメになっても、とりあえずは噛めたりします。もちろん痛かったり腫れたりもしますが。でも治療としては、歯の部分を全部はずして傷んだインプラントの部分を治療し、改めて歯の部分を装着する、といった大規模な修理が必要な場合もあります。最初と異なる歯科医院でこのような治療を行った場合、そこそこ高額な費用がかかるわけです。患者さんとしては治療をしたくないと思うのも、まぁ理解できます。
さらに、このような症例では、治療自体は大変うまくいったとしても、もとの条件が良くない訳ですから、その後の手入れが悪いと劇的に不具合が進行する場合があります。そのためにインプラントを行っている歯科医院では通常定期的なメインテナンスを行っています。メインテナンスの中断は、病院側の都合とか、患者さん側の都合とか様々でしょうが、とにかく大規模なインプラントの後に、メインテナンスの中断は大変まずいと考えています。いや、1本のインプラントでさえまずい場合が沢山あります。
③露出したり傾いたりしているインプラント
 手術がまずかった場合もあるでしょうが、高齢の患者さん、しかも訪問診療の場面で時々遭遇します。恐らくは20年から30年以上、問題なく使用されていたのでしょう。それが重い要介護状態になられ、歯みがきが不十分となり、歯科医院でのメインテナンスもできなくなったあげく、このような状態なったと推測できます。このような場合は訪問診療とか訪問口腔衛生指導などで対応しますが、認知症が重い場合など、それすらも不可能なことがあります。これは今後の、大きな課題になるだろうと思います。
④骨粗鬆症に注意。治療薬が長期間作用型になりつつある
 骨粗鬆症の治療で、おもに使用されている薬は顎骨壊死を起こすと言われています。これはインプラント手術の際まずいので、服用を開始する前に手術をするか、服用を一時中断してもらうしかありません。ところが最近は、効果が1年も持続する薬があります。ということは、服用をいったん中止してもらい、1年後にやっと手術できる勘定になります。さすがに骨粗鬆症にとっては良くないでしょうし、1年後にインプラント手術を、と言われても患者さんも戸惑うと思います。



なんとか解説ができました。少しくどかったでしょうか?次回は関連学会の対応を中心にお話しします。

インプラントのトラブル①


 さて、国民生活センター発表の、「歯科インプラント治療に係る問題-身体的トラブルを中心に-」から。ここで重要視されているのは、①相談件数のうち約7割が50万円以上の高価な契約だった。②痛みを中心とした身体症状が75.5%あり、そのうち41.6%は、症状が1年以上継続た。・・・等々です。高価な治療にもかかわらず、痛みが長引く等のトラブルが多いというわけです。この数字はちょっと驚きました。正直、私もインプラントでのトラブルを経験しています。それは上部構造(歯冠の部分)の破損と、上部構造とインプラントをつなぐネジの緩みなど数件で、痛みや腫れが数カ月に及ぶことは、現代のインプラントでは考えられないと思っていました。
 そこで口腔外科専門医の知人数名に、どういうわけで上記のようなトラブルになるのか、機会のある度に聞いてみました。彼らは大学病院や総合病院で診療しており、他の施設でのトラブルに対応することも少なくありません。すべて雑談としての質問でしたので、データがあるわけではないのですが、その分彼らの皮膚感覚に近いと思います。
 すなわち、
「十分な骨の量のある部分に、方向を間違わずに打ち込めばインプラントのトラブルはない。またこのような標準的な症例では、あえてCTなどの特殊な画像診断も必要ない。」
「問題は骨の幅が狭い、または十分な高さがない場合。特殊な手術が必要で、CTでの診断が必要なことも多い。このような症例で骨折や、副鼻腔の炎症が治らない等のトラブルが、一定数ある。」
「無歯顎(歯が一本もない状態)にインプラントをたくさん植立して歯列を回復した場合のトラブルは、その中でもやや目立つと思う。このような場合には、インプラントを取り去って総入れ歯を使ってもらうことを勧めることもあるが、信じられないことに、入れ歯よりも便利だから多少痛くても我慢する、という人もいる。」
80歳を過ぎた方に多いのが、あごの骨の吸収に伴って大きく露出したり傾いたりしているインプラント。長期間が経過したインプラントだね。このようなインプラントでは再利用もむつかしいし、高価なだけに撤去を拒否される方も多い。要介護者では撤去すること自体が難しい場合もあるし。」
「お前がやっているような基本的なインプラントではまず問題はないよ。でも最近では骨粗鬆症に注意だね。治療薬がどんどん長期間作用型になってるし。」
 基本的な症例だけやってれば初心者レベルの私でもまぁ問題ないというわけです。ちょっと安心しました。彼らの意見は、最近の学会の論調とほぼ一致していると感じましたし、実態はこんなもんだろうと思います。
 しかしこれは解説が必要ですね。次回以降に解説を試みます。


2013年9月8日日曜日

はじめに

 はじめまして。歯科医療に関するブログを始めてみます。
 内容はもちろん、一般の方向けにします。おおむね週1の更新を目指します。
でも続ける自信が薄いので、どこにも告知せずにひっそりと始めます。
  始めるにあたり、とりあえず、
 ①メインの記事は歯科医療関係、殊に自分自身が
行っている療法を中心にする。 ②それだけでは行き詰ること必定なので、
 時に趣味である読書などの記事も混ぜる。 ③読者のコメントは、
全てに返答する自信がとてもないので、申し訳ないけど受け付けない。
などの方針を立ててみます。
  さて、ブログ開設にあたり、歯科医師としてどうしても触れなければいけないだろうと、
 この半年ほど悩んでいたのが、インプラント・トラブルの問題です。
私もインプラントは時々やります。最近は患者さんからトラブルについて
質問や意見をうかがう機会も増えました。
  事の発端は、2011年11月22日に、国民生活センターから発表された、
 「歯科インプラント治療に係る問題-身体的トラブルを中心に-」という報告書でした。
さらに、2012年1月18日にNHKで放送された、「歯科インプラント トラブル急増の理由」
という番組があり、巷間にインプラントのネガティブな面が知れ渡りました。
歯科医師の反応はと言えば、私のまわりだけかも知れませんが、
これらの報道に対する反発は意外と少ないように思います。
さらに、関連学会や業界誌に、インプラントのトラブルを
患者さん視線で見つめ直す動きが盛んに行われています。
 最近、論文や記事がほぼ出揃った気配ですので、
私なりに次回から考察してみたいと思います。
この作業は、私自身の歯科診療に対する態度を、 再確認することにもなると思います。

 多少長くなりましたが、ま、最初、ということで。